バットマンの永遠のファム・ファタール、キャットウーマン(Catwoman)。稀代の怪盗であり、スーパーヴィラン/スーパーヒロインである彼女の人物像に迫る!
CATWOMAN 80TH ANNIVERSARY 100-PAGE SUPER SPECTACULAR #1 ©2020 DC Comics.
キャットウーマンとはどんな人物?
キャットウーマンは本名をセリーナ・カイルといい、ときにゴッサムの街を飛び回る女泥棒としてバットマンの敵となり、ときに激しい情熱を交わすバットマンの恋人となって、長年にわたりバットマンのコミックに登場してきた。猫をテーマにしたスーツに身を包み、しなやかな身のこなしで敵を翻弄して夜の街を駆け回る。犯罪者でありながら、バットマンとは付かず離れずの仲が続いており、二人の関係は作品によって様々な描き方をされてきた。艶やかなコスチュームと華やかな活動歴を持つキャットウーマンだが、その生き方は常に苦難と隣り合わせで、心に様々な傷を負う姿が度々描かれている。初登場からほとんどの期間セリーナがキャットウーマンとして登場し続けているが、ホリー・ロビンソンとエイコ・ハシガワという二人の人物が、後を継いでキャットウーマンになったこともあった。
キャットウーマン登場の歴史
1940年の『BATMAN #1』でボブ・ケインとビル・フィンガーによって生み出されたキャットウーマンは、ゴールデンエイジからブロンズエイジにかけて、主にバットマンのコミックスの中で登場してきた。作者のボブ・ケインは、バットマンのお色気担当として、ハリウッド女優のジーン・ハーロウとヘディ・ラマーをモデルにキャットウーマンを生み出したと語っている。人気を博したキャットウーマンだったが、1954年の『DETECTIVE COMICS #211』の登場を最後に、それから12年の間、紙面から消えることとなった。これは、当時コミックコードの導入によりコミックスに対する検閲が厳しくなったことが原因だった。
1989年に彼女を主人公とした初めてのミニシリーズ『CATWOMAN: HER SISTER’S KEEPER』が全4号で出版され、続いて1993年にはオンゴーイングシリーズがスタート。それ以来現在まで、ほぼ常に彼女の名を冠したシリーズが刊行され続けている。
キャットウーマンは映像作品でも繰り返し登場してきた。60年代のドラマシリーズ『バットマン』で初めて実写化され、ジュリー・ニューマーとアーサー・キットという二人の女優が演じた。その後も『バットマン フォーエヴァー』のミシェル・ファイファー、『キャットウーマン』のハル・ベリー、『ダークナイト ライジング』のアン・ハサウェイなど、アカデミー賞受賞/ノミネート経験を持つ錚々たる女優たちによってスクリーンで演じられてきた。ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』でもメイン・キャラクターとして登場し、キャムレン・ビコンドヴァが演じている。
最新映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』では、アニメ映画『レゴバットマン ザ・ムービー』でもキャットウーマンの声優を担当したゾーイ・クラヴィッツが、再びキャットウーマンを演じている。その他、多くのアニメ作品にも登場してきた。
キャットウーマンの特徴は?
外見
キャットウーマンは黒いレザーに身を包み、猫耳とゴーグルをつけた姿のブルネットの短髪女性として描かれることが多いが、その衣装が定着するまでは様々なコスチュームの変遷があった。
Batman #1, #2 © 1940 DC Comics.
Batman #3, #10 ©1940, 1942 DC Comics.
Batman #35 ©1946 DC Comics.
Superman’s Girl Friend, Lois Lane #70, #71 ©1966, 1967 DC Comics.
Batman #197, #201 ©1967, 1968 DC Comics.
Batman #210, Wonder Woman #201 ©1969, 1972 DC Comics.
Batman #323 ©1980 DC Comics.
Batman #407, Catwoman #1 ©1987, 1989 DC Comics
Catwoman #1, #28 ©1993, 1996 DC Comics.
Catwoman #2, #0 ©2002, 2012 DC Comics.
Catwoman#35, #3 ©2014, 2018 DC Comics.
能力と武器
キャットウーマンの一番の強みは、猫のようなしなやかな身のこなしと、ワイルドキャットに仕込まれた格闘術だ。長年の怪盗生活で得た経験や感の鋭さも、彼女の活動を支える能力の一つとなっている。さらに、携帯しているムチとスーツに仕込まれた爪はキャットウーマンの象徴とも言える強力な武器であり、これらを合わせると並居るメタヒューマン達とも肩を並べる、強力な女ヴィランとなる。
キャットウーマンは男を魅了する容姿の持ち主でもあり、時に彼女の色気も強力な武器の一つとなる。スラムの路地裏から上流社会まで、ゴッサムの隅々を経験したキャットウーマンは、ヒーローからマフィアに至るまで豊富な人脈も持っており、そういったコネは彼女の活動に有利に働いている。
キャットウーマンの経歴
起源<オリジン>
キャットウーマンの出自は何度か描かれているが、わずかながらもそれが初めて語られたのは、初登場から約10年経った1950年の『BATMAN #62』だった。
バットマンとの戦いの中で頭を打ち、キャットウーマンとなってからの記憶を失ったセリーナは、バットマンに覚えている記憶を語る。かつてスチュワーデスだった彼女は、航空機の墜落に遭い、枝に頭を打ち付けたことで記憶喪失となってしまう。そこで新たな人格が生まれ、セリーナはキャットウーマンとなった。また、彼女の父はかつてペットショップを営んでおり、その時に猫について学んだ経験が、彼女が猫に執着する原因なのであった。このエピソードでセリーナはキャットウーマンを引退するが、その約半年後に次の登場で復活を果たすことになる。
しかし1983年の『THE BRAVE AND THE BOLD #197』で、キャットウーマンのこの出自が全て嘘だったことが明かされる。
バットマンと出会う二年前、裕福な男と結婚していたセリーナは、夫の暴力に耐えかねて離婚していた。離婚時に元夫から全てを取り上げられ、憎しみを募らせたセリーナは、かつて贈られた宝石を盗み返してしまう。そこで盗みの快感を覚えたことで、泥棒が常習化していき、やがてキャットウーマンとなったことが語られた。
ちなみに、ここで出てくるバットマンとキャットウーマンは、ゴールデンエイジに登場したアース2の人物で、この当時連載されていたアース1を舞台にしたコミックではこの二人は結婚していない。
4年後の1987年『バットマン:イヤーワン』でセリーナの出自は一新され、1989年の初のミニシリーズ『CATWOMAN: HER SISTER’S KEEPER』でその出自がさらに詳細に描かれた。
ゴッサムのスラム街イーストエンドで娼婦をしていたセリーナ。妹分のホリー・ロビンソンとともに暮らしていたが、バットマンが現れたことで刺激を受け、コスチュームを着た泥棒となることを決意する。かつてワイルドキャットとしてゴッサムシティの犯罪と戦っていたテッド・グラントに鍛えられ、修道女となった姉妹のマグダレーナとの再会を経て、セリーナはキャットウーマンとなる道を選ぶのだった。
2012年の『CATWOMAN #0』で、NEW 52以降の新たな設定となっていたキャットウーマンに、再び新たな出自の物語が加わることになる。
バットマンとの出会い
キャットウーマンと関連が深いキャラクター達
バットマン:敵として、恋人として、キャットウーマンにとってバットマンとの関係は切っても切れないものである。時に救われ、時に傷つき、バットマンと結婚して子供を産んだ世界もあれば、不幸なすれ違いを繰り返す時間軸も存在する。バットマンとの複雑な関係は、キャットウーマンの物語において、常に中心的な存在感を持ち続けている。
ハントレス:クライシス以前も以降も、アース2はセリーナとブルースが結婚し、娘を授かった世界である。その娘こそハントレスことヘレナ・ウェインで、彼女もまた両親の後を継いでゴッサムのヴィジランテとなった。
ホリー・ロビンソン:妹と生き別れたセリーナにとって、ホリー・ロビンソンは妹同様の存在であった。売春婦として生計を立てていた頃のセリーナは、きらびやかな宝石やコウモリ姿のプレイボーイよりもホリーのことを一番気にかけていた。セリーナの背中を見て育ったホリーにとって、セリーナがキャットウーマンを引退した時、その名を継ぐことは自然なことだったのだ。
スラム・ブラッドレー:
ブラックマスク:暗黒のドクロを被ったゴッサムシティのマフィアのボス、ローマン・シオニスはバットマンの代表的なヴィランの一人であるが、キャットウーマンとの因縁も深く、現在ではどちらかといえばキャットウーマンの宿敵として描かれる機会が多い。特に、セリーナがキャットウーマンのスーツを捨て、ゴッサムのマフィアのボスとなった時は激しく対立した。
キャットウーマンの登場するコミックス
キャットウーマンのコミックスから、有名なエピソードをいくつか紹介!
・ドラマ『怪鳥人間バットマン』 ・映画『バットマン リターンズ』 ・映画『キャットウーマン』 ・映画『ダークナイト ライジング』 ・ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』 ・アニメ映画『ニンジャバットマン』 ・映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
The Cat
(BATMAN #1/1940年)
大富豪トラバース夫人による、豪勢な船上パーティーが開催された。このニュースがゴッサムの犯罪者たちの興味を引きつけ、必ず事件が起こると確信したブルース・ウェインは、ディックを給仕として忍ばせた。トラバース夫人の人間関係を探ったディックは、彼の甥が「キャット」なる人物と何かを企てていることを知ってしまう。そんな時、トラバース夫人の高価なエメラルドのネックレスが盗まれ、さらに船上はギャングに占拠されてしまう。バットマンとロビンはギャングを一網打尽にするが、ネックレスの行方はわからぬままだった。「キャット」の正体を暴き、ネックレスを取り戻すため、バットマンとロビンはある作戦を実行する。
Her Sister's Keeper
(CATWOMAN #1/1989年)
ゴッサムの路地裏で傷ついて横たわる女性が発見された。修道女に発見され、保護された彼女の名はセリーナ・カイル。のちにキャットウーマンとなるこの若き女性は、事情聴取に来たフラネリー刑事から、とある人物の電話番号を渡される。セリーナは妹分のホリー・ロビンソンと二人で暮らしていたが、ポン引きのスタンの言いなりの状態だった。利用され、傷つけられ続ける生活を変えるため、刑事からもらった番号を訪ねたセリーナは、そこで元ボクシング・チャンピオンのワイルドキャットこと、テッド・グラントの教えを受けることになる。髪を短く切り、前に進むセリーナだったが、ある日自分たちのシマに、顔に大きな傷をつけた男が現れ、スタンと揉め事を起こした。その日以来、ゴッサムの街にコウモリ姿の謎の自警員が現れ始める。ロビンソン・パークで起きた爆発の野次馬に行ったセリーナは、そこでコウモリの大群に襲われ、初めてバットマンを目撃する。その後もテッドの訓練を続けるセリーナは、スタンから仕事用に悪趣味な猫のボンデージを渡されると、ついに人生を変える新たな一歩を踏み出すのだった。キャットウーマンを映像で見るには…