2022年3月11日公開。DC映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』。
ヴィジランテとしての活動を開始してまだ2年目のバットマン。犯罪と戦い続け、街の恐怖と復讐の象徴となったバットマンに、ゴッサムシティを揺るがす巨大な陰謀と謎が襲いかかる…。
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
あらすじ
復讐の名の下に、ゴッサムシティの犯罪との戦いを続けるバットマン。活動開始から2年経ち、ゴッサム市警の盟友ジェームズ・ゴードンとも協力して街の治安維持に奔走していたが、ゴッサムの街の治安は最悪の状況で、街の上層部から最下層に至るまで暴力と麻薬と汚職に染まっていた。
そんな時期市長選を控えたハロウィーンの夜、現職の市長が謎の殺人犯によって殺された。バットマンは現場に残された謎を追い、深く街の暗部へと潜っていくが、犠牲者は次第に増えていくのだった…。
登場人物
バットマン(演:ロバート・パティンソン)
本名ブルース・ウェイン。幼い頃に両親を殺され、執事のアルフレッドと共にゴッサム郊外に住む大富豪ブルース・ウェイン。両親の死の真相追及とゴッサムシティの犯罪への復讐のため、黒いケープのダークヒーロー、バットマンとなり自警活動を行う。
リドラー(演:ポール・ダノ)
本名エドワード・ナッシュトン。ゴッサムシティの有力者を狙う連続殺人犯。現場には必ずバットマンに宛てたなぞなぞを残している。バットマンと警察を翻弄する知能犯で、黒いマスクを被り、街の秘密を暴露しようと犯行を繰り返す。
ペンギン(演:コリン・ファレル)
本名オズワルド・コブルポット。街のナイトクラブ「アイスバーグ・ラウンジ」のオーナーで、ゴッサム最大のマフィア、カーマイン・ファルコーネの右腕。街の裏事情に精通しており、今回の事件の裏側も知るような様子をほのめかしている。
キャットウーマン(演:ゾーイ・クラヴィッツ)
本名セリーナ・カイル。ストリートで育ち、多くの猫とともに暮らしている。友人を救うためバットマンと協力関係を結び、だんだんと事件の深くに関わっていく。
ジェームズ・ゴードン(演:ジェフリー・ライト)
ゴッサム市警の刑事。バットマンに厚い信頼を寄せ、協力しながらそれぞれの捜査を展開する。
アルフレッド・ペニーワース(演:アンディ・サーキス)
ブルースの父の代からウェイン家に使える執事。ブルースの父親的な存在としてブルースを育て、鍛えた。
カーマイン・ファルコーネ(演:ジョン・タートゥーロ)
マフィアのボスで、ゴッサムシティの裏社会を牛耳る顔役。街の有力者とコネクションがあり、強い影響力を持っている。ブルースやキャットウーマンとも関係がある。
ギル・コルソン(演:ピーター・サースガード)
ゴッサムシティの地方検事。映画初登場キャラクター。
ベラ・リアル(演:ジェイミー・ローソン)
次期市長選の候補者。現職市長に迫る支持率を獲得しており、ゴッサム市民の光となるべく活動する。映画初登場キャラクター。
ドン・ミッチェル・Jr.(演:ルパート・ペンリー=ジョーンズ)
次期市長選にも出馬する現職市長。リドラーの最初の犠牲者となった。映画初登場キャラクター。
アニカ・コスロフ(演:ハナ・ハルジック)
セリーナのルームメイト。殺害された市長との関係を暴かれてしまう。映画初登場キャラクター。
ピート・サヴェージ(演:アレックス・ファーンズ)
ゴッサム市警の本部長。映画初登場キャラクター。
予告
設定/その後の展開
本作はベン・アフレック監督・主演のバットマン映画として、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』、『ジャスティス・リーグ』と同じくDCエクステンデット・ユニバースを舞台とする作品として始動した。しかし、ベン・アフレックが監督を降板し、マット・リーヴスが就任。若き日のバットマンを主役としたストーリーへとシフトし、ロバート・パティンソンが新たなバットマンにキャスティングされた。最終的にベン・アフレックは企画から離れ、過去の作品とはユニバースを共有しない、独立した世界観の物語となった。
本作のペンギンを主人公にしたスピンオフ・ドラマの企画が進行中。
作品のポイント
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は、今までのバットマン映画と比べても、ダークな世界観が最高潮に達した作品だ。「リアル路線で描かれたダークヒーロー」としてのバットマンが凝縮された映画で、バットマン映画史上最も暗く、ノーラン版が明るく思えるほどの陰鬱さと暗黒が映画全体を支配している。バットマンといえばダークでしょ!という人にとっては、ここには見たかったバットマンとゴッサムシティの全てが詰まっていると言ってもいい。
ポイント1:とにかく暗いバットマン
常に深刻そうな顔つきで、バットマンのマスクを脱いでも目の周りは黒いメイクが残ったまま。自分に言い聞かせるかのように復讐という言葉に囚われ、ゴッサムの悪党との戦いを続けるバットマン。犯罪が蔓延し、雨の降り続けるゴッサムシティに呼応するかのように陰鬱なオーラを放つ彼は、とにかくダーク。夜の闇の中から現れ、街の犯罪者に恐怖を与える彼の存在は、スリラー味の強い本作にぴったりのキャラクター造形となっている。お馴染みの派手なガジェットの登場は少なく、マスクもまだ手作り感が残る、暗く多感な若きバットマンが、キャットウーマンと出会い、リドラーを追ううちにどう心情が変化していくのか?2年目だからこそ描けるバットマンの様々な姿は、今作最大の見所ポイント。
ポイント2:サスペンス要素満載!リドラーとの謎解き対決
今までのバットマン映画はスーパーヒーローのアクション映画としての側面が強かった。しかし本作はミステリー要素が強く、バットマンが謎を解きながら殺人事件解決に向かっていくという、サスペンス仕立てになっている。原作の『イヤーワン』やノーラン版バットマンにあったフィルム・ノワール的な雰囲気は抑えられ、『セブン』や『羊たちの沈黙』に代表されるクライム・サスペンスの印象が強い本作は、同時に『フレンチ・コネクション』や『タクシードライバー』のような70年代のアメリカン・ニューシネマの作品の数々からの影響も色濃く見える。
リドラーのキャラクター像は、アメリカ犯罪史に残る連続殺人事件「ゾディアック事件」をモチーフにしており、そのリアリズムによって映画がよりスリリングなものとなった。
ポイント3:多彩なキャラクターの魅力
アメコミの大きな魅力は何と言ってもキャラクターであり、本作でもバットマン、リドラー、キャットウーマン、ペンギン、ゴードン、アルフレッドと、原作の人気キャラクターが数多く登場している。どのキャラクターも過去に何度も実写化されてきたキャラクターで、過去の映像作品と今作での描かれ方の違いを見てみるのも面白い。
バットマンは今まで数え切れないほど実写化されているが、近作の『ジャスティス・リーグ』でのベン・アフレックは企画段階で今作に携わっており、若いバットマンを演じたロバート・パティソンとベテランのベン・アフレックのシリアス度を比べてみると、本作の立ち位置がより明確に伝わるだろう。
リドラーは『バットマン フォーエヴァー』で演じたジム・キャリーの印象が強いが、ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』でコーリー・マイケル・スミスが演じた知的で神経質なリドラーも印象深い。
キャットウーマンは『バットマン リターンズ』のミシェル・ファイファーや『ダークナイト ライジング』のアン・ハサウェイのようなアカデミー女優によって演じられてきた。彼女たちとはまた違う境遇に置かれた今作のキャットウーマンが、バットマンとの関係性をどう発展させるかも見所である。今作でキャットウーマンを演じたゾーイ・クラヴィッツは、『レゴ®バットマン ザ・ムービー』でも同じくキャットウーマンを演じている。全くテイストの異なる作品ながら、似た部分もある2作を比べてみるのも面白い。
ペンギンは『バットマン リターンズ』の化け物じみた姿のダニー・デヴィートが強烈だった。『GOTHAM/ゴッサム』ではメインキャラクターとして描かれており、ロビン・ロード・テイラーが一介の下っ端マフィアから裏社会のトップにまで上り詰めるペンギンの姿を全5シーズンに渡って演じている。
ジム・ゴードンは今作ではゴッサム市警の本部長になる以前の姿が描かれている。ノーランのダークナイト・トリロジーではベテラン刑事のゴードンをゲイリー・オールドマンが演じており、バットマンとの協力関係を築いていく様子が3作品に渡って展開された。一方『GOTHAM/ゴッサム』では主人公として描かれており、ベンジャミン・マッケンジーが、街の犯罪者たちに翻弄される正義感溢れる若いゴードンを全身で演じている。
原作の設定を踏襲し、毎回英国俳優によって演じられてきたアルフレッド。今作のアンディ・サーキスも英国出身であり、登場シーンはそこまで多くないながらもブルースとバットマンの素顔を知る唯一の人物として丁寧に描かれている。そのアルフレッドの若い頃を描くドラマが『PENNYWORTH/ペニーワース』だ。ジャック・バノン演じるイギリス陸軍の特殊空挺部隊(SAS)出身のアルフレッドの活躍や、ブルースの父であるトーマス・ウェインとの出会いが描かれている。
ポイント4:新たなバットモービルとカーチェイス
様々なキャラクター達と並んで人気が高いのが、映画の度に異なったコンセプトで登場するバットモービルである。毎回、映画の中のゴッサムシティの造形と対になるようなデザインで、バットマンのスーツ以上に豊富な性格が表現されてきた。今作では66年のドラマ版『バットマン』のヴィンテージカー感と、89年のバートン版『バットマン』のジェットエンジン搭載のスポーツカー感を混ぜて、荒くしたような印象で、暗いゴッサムの街で火を噴くモンスターマシンとして、劇中でも激しいカーチェイスを繰り広げてくれる。
カーチェイスのシーンは、映画の暗いテイストは残しつつもアクションの目玉の一つとしてたっぷりと描いてくれた。登場シーンから痺れる演出で、バットモービルの魅力がスクリーンに存分に映し出されている。
原作・関連コミックス
映画『THE BATMAN-ザ・バットマン』の原作となったコミックスや関連する作品達を紹介。
映画はオリジナルの脚本にいくつもの原作コミックスの要素を組み合わせており、原作を知れば知るほど、映画を楽しめる。
『バットマン:イヤーワン』(1987年)
ブルース・ウェインがいかにバットマンとしての活動を開始したのかがハードボイルド調で描かれる、フランク・ミラーによる現代バットマンの礎となった作品。ノーラン版に引き続き、本作でも『イヤーワン』のテイストが色濃く反映されている。バットマンやゴードンは当然ながら、スラム街で育った友人思いの泥棒というキャットウーマンの設定は『イヤーワン』からの影響が強い。
『バットマン:ロング・ハロウィーン』(2001年)
バットマンの2年目を描き、ハロウィーンの夜から物語が始まる本作は、映画『THE BATMAN-ザ・バットマン』の最も直接的な原作と言える作品。『イヤーワン』で描かれたバットマンと街の腐敗との戦いを引き継ぎつつ、バットマンの有名ヴィラン達が数多く登場し、バットマン、ゴードン、デント(トゥーフェイス)の三人の関係を主軸に、ミステリ要素も盛り込まれて描かれている。キャットウーマンとファルコーネの関係性も一歩踏み込んで描かれており、その点でも『THE BATMAN-ザ・バットマン』に設定が反映されている。
『バットマン:ハッシュ』(2002年〜2003年)
ブルース・ウェインの幼馴染であるトミー・エリオットが登場し、新登場のヴィラン「ハッシュ」を中心にバットマン・ヴィランがオールスターで登場する作品。特にリドラーが重要な役どころで登場しており、『TH BATMAN-ザ・バットマン』でも所々に本作の影響が見て取れる。
『バットマン:ゼロイヤー』
『バットマン:エゴ』
『バットマン:インポスター』
作品情報
原題:THE BATMAN
製作年:2020年
上映時間:176分
映倫区分:G
製作国:アメリカ
公開日:2022年3月4日(米)/2022年3月11日(日)
配給:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
製作:DCフィルムズ、6th & Idaho
スタッフ/キャスト
マット・リーヴス【Matt Reeves】(監督・脚本・製作)
1966年生まれ。その他の作品に『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)、『猿の惑星: 新世紀』(2014年)、『猿の惑星: 聖戦記』(2017年)など。
ロバート・パティソン【Robert Pattinson】(バットマン)
1986年生まれ。2004年にテレビ映画『ニーベルングの指環』でデビュー。2005年に『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で注目され、2008年の『トワイライト~初恋~』以降『トワイライト』シリーズでは全5作にわたって出演している。他の主な出演作として『ディーン、君がいた瞬間(とき)』(2013年)、『グッド・タイム』(2017年)、『TENET テネット』(2020年)、『悪魔はいつもそこに』(2020年)など。
ゾーイ・クラヴィッツ【Zoë Kravitz】(キャットウーマン)
1988年生まれ。2007年に『幸せのレシピ』で映画デビュー。役者のほか、モデルの仕事も行なっている。他の主な出演作として『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年)、『ダイバージェント』シリーズ (2014年~2016年)、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)、『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017年/声の出演)、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(2018年)など。
ポール・ダノ【Paul Dano】(リドラー)
1984年生まれ。子役出身で、2001年に『L.I.E.』(日本未公開)で映画デビュー。それ以来、インディペンデント系の映画を中心に多くの映画に出演してきた。他の主な出演作は『リトル・ミス・サンシャイン』(2006年)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)、『ルビー・スパークス』(2012年)、『プリズナーズ』(2013年)、『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(2014年)、『スイス・アーミー・マン』(2016年)ほか多数。
コリン・ファレル【Colin Farrel】(ペンギン)
1976年生まれ。1998年にBBCのドラマでデビュー。2000年に『タイガーランド』で注目され、以降多くのハリウッド作品に出演してきた。主な出演作は『マイノリティ・リポート』(2002年)、『フォーン・ブース』(2002年)、『マイアミ・バイス』(2006年)、『ヒットマンズ・レクイエム』(2008年)、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016年)ほか。
ジェフリー・ライト【Jeffrey Wright】(ジェームズ・ゴードン)
1965年生まれ。1990年の『推定無罪』で映画デビュー。主役を務めた『バスキア』(1996年)で高い評価を受ける。そのほかの作品に『ブロークン・フラワーズ』(2005年)、『007』シリーズ(2006年~2021年/『007 カジノ・ロワイヤル』、『007 慰めの報酬』、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』)、『ミッション: 8ミニッツ』(2011年)、『ハンガーゲーム』シリーズ(2013年~2015年/『ハンガー・ゲーム2』、『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』、『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』)など。
ジョン・タトゥーロ【John Turturro】(カーマイン・ファルコーネ)
1957年生まれ。1980年『レイジング・ブル』で映画デビュー。80年代~90年代を代表するインディペンデント映画に多く出演するほか、『トランスフォーマー』シリーズのような大作にも出演している。主な出演作に『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)、『ミラーズ・クロッシング』(1990年)、『バートン・フィンク』(1991年)、『クイズ・ショウ』(1994年)、『オー・ブラザー!』(2000年)、『トランスフォーマー』シリーズ(2007年~)、『ジゴロ・イン・ニューヨーク』(2013年)など。
アンディ・サーキス【Andy Serkis】(アルフレッド・ペニーワース)
1964年生まれ。モーションアクターとしても有名で『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001年~2003年)、『キング・コング』(2005年)、『猿の惑星』シリーズ(2011年~2017年)、『スターウォーズ』新三部作(2015年~2019年)などでモーション・キャプチャーを演じている。『ブレス しあわせの呼吸』(2017年)、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年)などでは監督も務めている。そのほかの出演作に『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)、『ブラックパンサー』(2018年)など。
ピーター・サースガード【Peter Sarsgaard】(ギル・コルソン)
1971年生まれ。1995年に『デッドマン・ウォーキング』で映画デビュー。その他の作品に『ボーイズ・ドント・クライ』(1999年)、『ニュースの天才』(2003年)、『愛についてのキンゼイ・レポート』(2004年)、『ジャーヘッド』(2005年)、『17歳の肖像』(2009年)、『グリーン・ランタン』(2011年)、『マグニフィセント・セブン』(2016年)など。